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自動運転社会とコンパクトシティ③

[ Editor’s Column ITS動向 自動運転 ]

自動運転は、人の生活や社会にどのような影響を及ぼすのか?今後の交通・環境政策にとって最大の影響要因であることには間違いない。

◆近代の交通史をレビューすると、自動車という交通手段が、100年前から今日までに経済、社会に与えたインパクトは計り知れない。
しかし、著名な某交通工学者の言葉を借りれば、来るべき自動運転社会については「現在は『群盲を撫でる』」といった状況であり、いまだ、体系的に整理されていない。逆に、交通環境政策を、ライフワーク的、ある種気楽に?フォローしているものにとっては、格好の研究対象・案件である。

◆11月5日の日本経済新聞夕刊が、パリ発の外電で「NY・ロンドンで地下鉄離れ、ライドシェア、乗客奪う」という記事を掲載した。(下記に引用。)20181105nikkeikiji.jpg
▼欧米の主要都市で、地下鉄やバスなどの利用者が減っている。米ニューヨーク市の地下鉄利用者は2年連続で減少、ロンドンやパリでも減少傾向が出ている。ライドシェアの利用が一因と指摘する声があり、台数規制の動きも出始めた。
▼国ごとに背景は複雑だが、米ウーバーテクノロジーズなどのライドシェアが、鉄道・バスの市場を奪い、さらに都市の交通渋滞を悪化させているとの見方が出ている。これまでライドシェアは主にタクシーや自家用車と競合するとみられてきた。
▼ニューヨーク市の交通政策委員だったブルース・シャラー氏は7月、米国での調査を基に「ライドシェア利用の6割は公共交通、徒歩、自転車などの代替だった」として、ライドシェアが都市の交通渋滞の一因になっている可能性に言及した。残り4割が自家用車やタクシーの代わりになったとみられるという。
▼カリフォルニア大学デービス校の研究チームも17年、同じく米国での調査で「総合すると、ライドシェア利用者は公共交通機関を使わなくなる」と報告した。特にバスやトラムなどが需要減の影響を受けると推定する。
▼正確な統計はないが、もう一つの要因と推定されているのが在宅勤務の広がりだ。インターネットを使ったテレビ会議などが普及し、公共交通機関で会社に来なくても勤務できるワークスタイルが浸透しつつある。

◆「CASE」が公共交通の客を奪うということはあり得ることである。
かって、先駆的に導入され、すっかり定着した感のあるパリの自転車レンタルシステム"Velib(ヴェリブ)"も、主な顧客はバスサービスの顧客からの転換ということはよく言われるところである。
気になるのは、新しい工夫や技術が公共交通の顧客を奪うことの評価である。
交通政策担当者にとって一つの思考過程の中に「常に公共交通『善』」という前提が根強くあるのではないかという点である。
最近、あるシンポジュームで「『歩行は公共交通』であるから、駅前の空間を歩行者空間として確保する」ということを述べた「空間」評論家がいたのには驚いた。

◆2013年に制定された交通政策基本法では、「まちづくりと一体となった公共交通ネットワークの維持・発展を通した地域の活性化」とフランスに倣い基本的人権としての「交通権」が議論された。「交通権」の議論には概ね賛成だが、このことが容易に「公共交通への財政的補填」の論拠に使われるのは気を付けなければならない。

◆自動運転時代になり、ITの高度な活用により「マルチモーダルなサービス」が可能になると、一番影響を受け、自己革新が必要なのは公共交通セクターではないかと思っている。

◆自動車産業はIT産業や国際競争に打ち勝つために激しい競争下にある。その動きの中で、既存の公共交通セクターは、従来の公共交通は、『既得権』のみで、新たな交通市場の変化に対応しようとしているのでは、また顧客を奪われるだけだ。そして、従来の延長の自動運転車の規制への働きかけを主たる戦略とするのは、真に利用者のためにはならない。
先般のITS世界会議や国内での実験の取り組み例をフォローすると、公共交通の中でも、競争力の低いバス事業者も実験に取り組みを始めている。
また国土交通省都市局の「都市交通における自動運転技術の活用方策に関する検討会」で「都市における自動運転の活用方策の検討、適切に対応できる環境づくりの推進」の検討が行われている。

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◆交通まちづくりやコンパクトシティづくりの中でも、「新しいインフラ協調や働き方など社会システム」を組み入れた「バス事業」が、電車に比較して「密なネットワーク」と弱点であった「定時制の確保」を新たな強みとして、利用者の選択により復権する可能性を期待したい。

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