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「地方公共交通活性化再生法=地域交通法」の第4回目の改正

[ Editor’s Column 政策動向 ]

4月28日、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の改正法=地域交通法」が公布された。

5月は、三重県で開催されたG7交通・運輸大臣会合で地域交通対策、CN(カーボンニュートラル)とともに重要課題として取り上げられた。

また、岸田内閣は、「骨太の方針2022」の中で、交通事業者と地域・国の官民共創等による地域公共交通ネットワークへの再構築を取り上げている。法整備等を通じ、国が中心となって、交通事業者と自治体が参画する地域公共交通協議会による計画策定・規制緩和を行う、としている。長年、地域公共交通の再構築について提言を行ってきた岡山の(一財)地域公共交通総合研究所は、いち早く「歓迎」のコメントを出している。

約50年間交通環境問題に関心を持ち、ライフワーク的にフォローしてきたものとして、最近の動きについて少し整理したい。

まず、この度の法改正を、戦後3度目の節目ととらえている。
●第1の節目は、
1970 年代初頭、高度成長下でのマイカーの増加に伴う需要構造の変化である。
自動車と鉄道の競争条件が不平等あるという「イコールフッテング論」をもとに、自動車への課税と公共交通への補助(自動車重要税)が議論された。この動きに理論的な根拠を与えたのが、宇沢 弘文 東大名誉教授の名著「自動車の社会的費用」である。


●第2の節目は
2000年の鉄道鉄道事業法、道路運送事業法の『需要調整』条項の撤廃である。
これは、国鉄民営化と軌を同じくした考えで、公共交通機関の活性化のため、第3者の参入を促進、撤退の自由を意図したものである。
この施策は、結果的に一部を除き、意図に反して多くの地方公共交通網が廃線、減少、サービスは低下したと理解している。


●第3の節目が、
冒頭紹介した「地域交通法」の制定、及び4回にわたる一連の改正である。

特色は、公共交通を重要な社会インフラとして捉え、関係主体の責任を明確化した点である。
第1の節は、「マイカー対公共交通」、第2の節は、『大きな政府と小さな政府』「新旧自由主義」という2項対立の考えの違いが政策の基本にある。


これに対し、第3の節は、生活の質、最近の言葉でいえば、Well being の向上、という意味から「移動手段」をとらえている点である。

さらに、生活の基盤である「まちづくり」の手段としての「移動」を強く打ち出している点、及び、交通手段間の「協調と競争」の考えのもと、独占禁止法の例外規定の設定、MaaS等新しい工夫の導入にも門戸を開けている。

今回の改訂は、国土交通省 交通政策審議会地域公共交通部会長 中村 文彦 東大特任教授と同代理 加藤 博和 教授の考えが色濃く反映していると思う。

中村教授は、5月19日名大で開催された同法のセミナー(地域公共交通再構築元年スタートアップセミナー)で、

基本的な思いとして、健康で文化的な生活(Well-being)のため、もっと"お出かけ先"への移動手段を選ぶことの重要性を訴えていた。


加藤教授は、「地域公共交通プロデューサー」として、長年、地域公共交通の再生の現場で汗をかいてきた経験から、多くの人がお出かけ頂ける移動サービスこそ、日本にとって重要なものとして、住民、自治体、国の"共創"を強く訴えている。


改正法の具体的施策は、自治体主導による国・自治体・事業者の「共創体制構築」、と「社会資本整備特別交付金への項目追加」である。


2項対立の施策に比較して歯切れは良くないが、構造的な不況に加えコロナ禍で打撃を受けている地域公共交通の再生が地に付いたものになることを期待したい。

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