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CASEの社会的費用

[ Editor’s Column ITS動向 ]

■昭和40年代~50年代にかけてのモータリゼーションの時期、経済学者 東京大学名誉教授 宇沢 弘文氏 (1928/7/21~2014/9/18)により「自動車の社会的費用論」が提起され、自動車はその費用を十分負担していないという議論が注目された。
一言でいえば、自動車利用者は、渋滞、事故、環境汚染、などのコストを十分に負担せずに利用しているという主張である。この主張が、政策的には自動車への課税や規制、鉄道などの公共交通への補助などの理論的な根拠の一つになった。
自動車及び自動車交通の効用は論を待たないが一方で環境汚染や事故など社会課題を惹起してきたことには疑いない。

■今日、自動車のCASE化が促進され、生き残りを賭けた企業間競争が激化している。
昭和40年代~50年代とは形態は異なるが、「自動車の利用価値に着目した第2次モータリゼーション」が到来するかもしれない。最近すっかり使われなくなったが「ユビキタス」時代のモビリティは人類の基本的な欲求である。
しかし、物事には常に正の局面と負の側面がある。
CASEは、事故など第1次モータリゼーションの負の課題を解決する可能性がある。しかし、一方では、必ず負の局面が出現して来ることも予想される。
CASEの負の局面は大きく分けて、「コネクテッド」に関する領域、モビリティに関する領域に2分類できる。
◎「コネクテッド」に関する領域は、今日のネット社会と共通の課題である。IoTの主要機器となる自動車には、サイバーセキュリティとプライバシー保護が課題となる。
内閣府が主導し産官が連携しているSIP(戦略的イノベーションプログラム)では、「自動運転技術の非競争・共通領域」の中でハッキングなどサイバーセキュリティを取り上げている。
また、セフティ対策として、車両に数多くのセンサーやカメラを取り付け、大量のデータを集めて分析、そのデータを瞬時に送信できる5Gなど「高速通信網の整備」も欠かせない。

■現在 我が国でもGAFAに対して規制の動きが検討され、今週大坂で開催されるG20でも議題に上がっている。
対象になっている4社のうち、Google、Amazon、Appleはそれぞれ傘下のウエイモ、オーロラ・イノヴェイション、Project Titanなどで自動運転サービス開発に取り組んでいる。

■サイバーセキュリティやプライバシー問題が、宇沢博士の言う「社会的費用」にならないためには、自動車利用者がコストとして「内部化」する仕組みが必要である。
◎「モビリティ」に関する領域についても、徐々に問題提起が行われている。
平成29年11月に国土交通省がまとめた「都市交通における自動運転技術の活用方策に関する検討会」の報告もその一つである。
同報告では「自動運転と都市交通~自動運転に関連する様々な仮説」の中で想定される課題について整理する試みが行われている。参考までに引用する。
① 都市交通への影響
・利用者のモビリティは向上するが、都市の持続性(コスト)は増大するのではないか
・幹線系公共交通のニーズが減るのではないか
・車移動、駐車場などが増加し、既存のインフラでは受け入れきれないのではないか
・ラストワンマイル手段の寡占化が進むのではないか
・都心部の渋滞が解消しないのではないか
② 交通施設の役割・機能への影響
・シャアドモビリティのための駐車場が必要になるのではないか
・自動バレーパーキングにより、駐車場の配置や形態が変わるのではないか
③ 移動の変化
・利用者の歩行距離が低下し健康が低下するのではないか
・駐車場要件よりも施設魅力の優位性が増し大型施設などへの集中が高まるのではないか
・幹線道以外でも渋滞や混雑が拡散するのではないか

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■さらに従来から進めているコンパクトシティやネットワーク型国土利用計画との関係も検討が必要である。
予想される社会変革に対し、最初からあまり負の局面を強調しすぎると折角のイノベーションを阻害する恐れもある。
抑制的な制度設計や既得権保護の制度設計は慎重でなければならないがスタディは大切である。

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