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コンパクトシティと自動運転社会 ①

[ Editor’s Column ]

◆自動運転車の開発が進展している。
企業は、要素技術の開発、クルマへの搭載、公道走行によるデータ取集、を進めている。行政は、道交法、道路運送車両法、など実運用に必要な制度改革の検討を行っている。また、国際的な商品であるクルマでは、国連等で制度の標準化の検討もなされている。

◆都市・交通計画の関係者も徐々に関心を持ちだしている。

◆近代の交通史を概観すると、特に都市内交通では、馬車→鉄道・軌道→自動車、という交通手段の流れで推移して来た。各交通手段は、それぞれ効用を待ちつつ課題を内包しながら発展し、主役の座を交代してきた。
例えば、馬車時代のロンドンやニューヨークにおける渋滞、馬糞の処理、それによる疫病の発生、いわゆる外部不経済の発生はよく知られているところである。
鉄道・軌道系は、特に大都市での車内混雑、地方部での採算性は解決せず日本では「サ―ビス提供撤退の自由」(*)が認められた。軌道は、駅周辺での線的サービスであり、面的サービスは、バス・タクシー・自家用車・自転車に依存せざる得ない。
自動車交通は、事故、公害、渋滞という社会的課題の根本的な解決には至っていない。特に開発途上国の状況は深刻である。さらに、都市の形態を変化させてきた無秩序な外延化現象がある。
(*) 鉄道法、道路運送法でそれぞれ2000年と2002年にいわゆる需給調整事項を廃止し、撤退を届出制とした。

◆「都市機能のコンパクト化」の考えと政策は、交通とは直接には関係なく登場してきたが、その底流には「自動車交通のへの過度な依存からの脱却」がある。
「都市のコンパクト化」の提案と政策遂行の歴史は、意外?と古く1972年のローマクラブの提言に織り込まれている。

▼この経緯については、柳内 久俊氏「コンパクトシティの都市像と創造」(財団法人日本経済研究所 調査局 日経研月報 2010 右図)、藤崎 考氏「コンパクトシティ概念の再定義」(東大公共政策大学院公共管理コース 2014)、で要約を紹介する。
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 (コンパクトシティの考え方の)原点は、1972年のローマクラブの提言から国連での地域開発論の展開、さらにEU 諸国の都市政策の転換へと流れる地球環境問題への対応である。

欧米では市街地の再生を目指して1970年代から検討されてきた概念であるが、特に1990年代以降、スラムの拡大、犯罪の多発化、コミュニティの崩壊など都市問題の深刻化に対して都市計画および市街地での暮らしぶりを再評価する中で議論されてきたものである。


 「また、大陸横断鉄道の沿線および高速道路の交差点等に都市が発達したアメリカにおいても都市機能の拡散から収斂の方向へ都市政策の発想転換を図ったもので、都市空間の全体構造をまとまりのある形態("コンパクト")に変え、魅力的で活気がある市街地を形成することを目標としている。


 日本では1980年代から全国各地で市街地の空洞化問題が生じて都市圏の無秩序な拡大、大規模店舗の郊外立地等に対策が講じられてきたが、日本版コンパクトシティは市街地の空洞化問題に加えて、住民の高齢化対策、『小さい政府』を指向した行政の効率化等の政策課題も含めた都市政策の見直しの視点から採り上げていることが特色である。


◆都市のコンパクト化推進のため、現在使用されている交通政策面での主要な手段は、LRT、P&R(Park and Ride)、自転車・歩行、である。
LRTは、形状はともかく、大きな技術革新があるわけではないが、主役となっている。
ストラスブルグ、ニース、ボルドーなどフランス地方諸都市のLRTはよく知られている。
全米では「住みたい街」として人気のあるポートランド市で、住民運動により高速道路の建設を一部阻止する一方、市電が復活している。 日本でも、コンパクト都市化の成功例として有名な富山市は...LRTを導入している。


◆自動車交通発展の"3種の神器"は、内燃機関の発明、大量生産による自動車の価格低下、高速道路網の整備、が定説であるが、冒頭記述した通り、最近は自動運転車(AV)の開発が促進されている。
関連業界では、「100年に一度の大変革」と受け止めているが、「都市と交通手段の相互関係」からAVが走る都市や国土の利用形態も「100年に一度」の大きな影響を受けることは間違いない。

さしあたって、自動車交通の弊害は大幅に改善され、交通手段としての完成度が増してくる。
フランスで開発され、日本の都市で実験が行われている小型バスは、車車間通信による車両連結により都市部で面交通の重要な機能を果たしえる。

今日までほとんど手つかずで小手先の対応しかできなかった近距離の公共交通手段が変化し、ビッグデータの活用と合わせ新しい公共交通サービスの形態が出現し運営形態もMaaSなどで変化するだろう。

また、AV時代の道路インフラは、AV交通・通信インフラに変化し、交通管制方式も激変し、街の景色も一変するだろう。


そして、一番考慮されるべきは、何のための街か?という点である。
人と人との触れ合い、交流、活性化と幸せ感の醸成等いろいろあるが、それを可能にするのが「モビリティ最大化」都市ではないかと思われる。

スマホなど通信技術の発展と普及により、人と人の繋がりは各段に増えた(*)。しかし、外部不経済を最小化しつつ、「移動したいときに移動できる」リアルなトラフィック=モビリティの「最大」を低価格で可能にする街づくりが理想だろう。AVはその可能性を秘めている。
(*)ちなみに、通信の単位も交通と同じく、"トラヒィック"と呼ばれる。

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