HOME > Mobility 関連情報 > 2025年 > 高齢者モビリティの現実解は「ADAS付き軽自動車」 ── ジャパンモビリティショー2025 取材レポート
ITS情報、まちづくり情報

高齢者モビリティの現実解は「ADAS付き軽自動車」 ── ジャパンモビリティショー2025 取材レポート

[ Editor’s Column ITS/CASE&MaaS イベント情報 自動運転 高齢者とモビリティー ]

ジャパンモビリティショー2025(JMS2025)のプレス公開日には、多くの報道関係者が詰めかけ、主要メーカーのブースは熱気に包まれた。大会コンセプトは「ワクワクする未来を、探しに行こう」。本稿ではその中でも、ITS-P21が長年取り組んできた「高齢者モビリティ」に焦点を当ててレポートする。

ホンダ:三部社長が「Uni-One」で登壇

ホンダの三部社長は、着座型ハンズフリーパーソナルモビリティ 『Uni-One』 に乗って登壇した。
身体の動きを検知するAIセンサーにより体重移動だけで進行方向を操作でき、屋内外の移動を想定した設計となっている。高齢者や身体の不自由な人の移動支援を念頭に置いた"次世代パーソナルモビリティ"として注目を集めた。

トヨタ:キーワードは "For All" から "For You" へ

トヨタの佐藤恒治社長は、「私たちは "Mobility for All" を掲げています。しかし、本当に"すべての人"に同じモビリティが最適とは限りません」と述べ、"For All"から"For You"へ という新たな方向性を示した。

ブースでは多様なニーズに応えるコンセプトモデルが展示されたが、必ずしも高齢者特化ではなく、「個々人に最適化された移動」を重視する姿勢が読み取れた。

かつての主役「超小型EV」から見えてきた限界

2010年代後半から2021年頃まで、東京モーターショーで高齢者向けモビリティとして注目されていたのは 超小型EV だった。

トヨタは i-REAL、i-ROAD を発表

i-ROAD はトヨタ車体 COMS とともに仏グルノーブルで長期実証

ITS-P21も現地取材を実施

しかし、これらは保安基準上「第一種原動機付自転車」に分類され、車室が設けられない。
道交法上も普通自動車免許が必要で、高齢者の利用を想定すると課題が大きかった。

この弱点を補うため、トヨタは2021年に軽自動車規格の 『C-POD+』 を発表したが、昨年には販売を終了。
超小型EVは単独開発では コスト・ニーズの両面で採算が難しい ことが明らかになった。

JMS2025は、この「現実的な答え」を示す場となった。

免許返納のジレンマ:移動の不便さが原因で減少傾向に

2019年の池袋高齢者事故を契機に一時は免許返納が増加したが、近年は減少傾向に転じている。
背景には「買い物・通院といった日常移動の不便さ」がある。炎天下や悪天候では徒歩や自転車は大きな負担であり、公共交通が乏しい地域では生活に支障が出るためだ。

さらに、2024年1〜10月の交通事故死者数は 2,005人 と、政府が来年3月までの目標値(2,000人)をすでに上回っている。高齢者の安全確保は喫緊の課題である。

BYD「ラッコ」:軽EV市場に衝撃?

今回もっとも注目を集めた1台が、BYDの軽自動車 「ラッコ」 である。
日本専用の仕様を取り入れた"日本向け開発車"とされ、低価格帯での競争力が際立つ。

日本の軽自動車は traditionally--

普通車並みの装備
高価格化
その結果、ADAS標準化が進みにくい

という課題を抱えている。
一方BYDは、BEVの低コスト化で世界トップクラスの強みを持つ。
軽自動車市場の価格バランスに影響を与え得るモデルとして、注目度は高い。

高齢者モビリティの現実解:「ADAS付き軽自動車」

内閣府SIPの報告では、カメラ+センサー中心のADASでも十分な事故削減効果が得られる ことが明らかにされている。

ここから導かれる結論は明快だ。
高齢者に必要なのは "夢のモビリティ" ではなく、適正価格で安全・快適に使える軽自動車である。

免許返納後の生活不便を解消
炎天下・降雨でも利用可能
家族の安心につながる
ADASで事故リスクを大幅低減

超小型EVやキックボード型モビリティが"未来の夢"を描いた時代を経て、
今求められているのは 安全・快適・実用のバランス である。

最後に:国内外メーカーの挑戦に期待

BYDを含む国内外メーカーは、軽自動車×ADASという「現実解」を踏まえつつ、高齢者の移動を支える次世代モビリティに挑んでいる。
今後もこの分野の動向から目が離せない。

<< JMS(ジャパンモビリティショー)2025での高齢者モビリティの取り組みを見る ―消えた超小型電気自動車の展示― | 記事一覧 | あいちITS WORLD2025開催 >>

じゃんだらリング活動情報へのコメントなどは、豊田市を中心とした地域密着型SNS『じゃんだらリング』からお寄せください。

上に戻るトップページに戻る