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豊田市交通モデル都市 ⑤【住民・市民参加】(DATA追記)

[ Editor’s Column Smart City/豊田市動向 自動運転 ]

 平成30年3月4日(日)、「豊田市民の誓い」40周年記念式典に参加した。
「豊田市民の誓い」は「ふれあい豊かな地域社会づくり」を目的に市政27周年の昭和53年3月1日に制定された。同年5月「豊田市民の誓い推進協議会」が発足。
40年前の1978年(昭和53年)は、トヨタ出身の佐藤市長の後を受け、市職員出身の西山氏が市長に就任した翌年である。当時は自動車関連の工場建設が一段落し、市政の重要課題の一つが、外部から流入した社員子弟の義務教育施設及び高校の新設であった。
社会流入した新市民の子弟は豊田市が故郷であり、旧市民・合併市町村民も含めて一体感の醸成のためにも「豊田市民の誓い」は重要な案件であったと思われる。その後、平成の大合併でも「豊田市民の誓い」は引き継がれ40年を迎えた。

 同市は、拳母地区を起点とする合併都市であり、その為、行政自治区の活動を支援している。全国でも珍しい「わくわく事業」制度も創設され、定着している。鈴木前市長が市民と行政の「共働事業提案制度」を推進したのも「豊田市民の誓い」推進と同じ線上にあると理解すると解りやすい。「共働事業提案制度」は、「住民参加・市民参加」を「受け身ではなく、住民がより積極的に主体的に動く」ことを期待した運動である。

ちなみに、名古屋市の河村市長はブレーンであった 後 房雄教授(名古屋大学)のアドバイスを基に選挙時の公約の一つとして掲げた「地域予算」制度はを掲げた。そして、庁内に担当局まで設置して推進しようと試みたが、確たる成果もないまま廃止されたのとは好対照である。

 筆者は、この分野の専門家ではないが、「交通環境改善における住民、市民参加」という面から関心を持ち続け、一部海外の事例も含め、広く長年フォローしている。
後日、少し体系的にまとめたいと思っているが「交通環境改善における住民、市民参加」について順不同ではあるが、列記する。
◆交通計画や交通課題解決のプロセスに「住民・市民参加」で試行錯誤が行われ、多くの例が紹介されている。町おこしやイベント開催の例も紹介されている。
前者は、札幌・金沢・松山の例等、後者の町おこしやイベント開催例では、古くは愛媛県五十崎町、最近では徳島県神山町など多くの事例がが知られている。
"まちづくり"や"町おこし"という言葉を使うと「ローカル」で「コミュニティの再生」とつながる。民主党政権時に提唱された「新たな公共」概念やNPO法の制定・改正もこの時代の中で行われている。

 一方、交通環境改善という観点からは、太田 勝敏氏(東大名誉教授)が提案した「交通まちづくりの」の概念がある。この概念は、「過度の自動車交通に伴う弊害を改善するための市民参加」と「交通計画と都市計画の連携」を柱としている。
◆ところが、最近、交通計画や交通課題解決のプロセスに「住民・市民参加」という用語が殊更表立って言われなくなったような気がする。制度としても社会意識としても定着してきつつあるからだと思われる。

行政手続法により、行政は政令や条例の決定プロセスで「パブリックコメント」の募集・結果の発表が義務づけられているのも一つの例と言えよう。
◆一方で、個々の案件で民意がどの程度反映されているか?形式的になっていないか?という疑問や問題提起が付きまとう。民主主義における決定プロセスが常に持つ課題である。最近、市庁舎や公立病院の建設で「市民投票」を行った例があるが、これは「間接民主主義」とは何かを考えさせられる。

◆交通問題ではないが、住民参加という面で印象に残っているのは2005年の愛知万博である。筆者も視覚不自由者の移動支援システムの実験を受託し、参加した。
愛知万博における市民参加に関しては、町村 敬志氏、吉見 俊哉氏共著のbook.jpg「市民参加型社会とは-愛知万博計画過程と公共圏の再創造」が出色で何度も読み返している。同書は「未来の市民と行政と専門家の間には、どのような関係が構築されるべきなのだろうか。愛知万博開催に至る『紛糾』と『合意』の歴史的経過に多様な角度から光を当て、日本の公共空間の変容を明らかにする。」ことを目指している。
当時名古屋の市民団体は、日本野鳥の会等とも連携し、、藤前干潟埋め立て阻止運動の延長線上で「開発型の万博を阻止」した役割を果たしたが、新しい形を提供できたかとなると「限界」があったと思う。

※以上をまとめると
「コミュニティ発展型の住民参加・活動」は、機能はするが交通計画のような行政の骨格的業務に関する参画は、「反対運動」は出来るが提案までは至らない。
一方、海外においても、必ずしも適切な例は見当たらない。米・ポートランド市は2度訪問し、日本で勉強会を主催したが、日本に導入するには制度、文化の差異は大きく、導入は簡単ではない。

現時点での結論は、「提案」に至るには、既存組織にとらわれない≪人、もの、金≫を備えた第3の組織がぜひ必要である。そこまで欲張らなければ、NPO法人「アサザ基金」の飯島 博氏の言葉を借りれば住民・市民参加は「社会のホルモン剤」という認識と自覚が必要である。「ホルモンは人体に不可欠ではあるが、表に出る主役ではない」。
自動運転社会を迎えるにあたり、最近、このことを考えている。

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